『決定版 感じない男』(ちくま文庫)


感じない男 (ちくま新書)

感じない男 (ちくま新書)

2005年に、ちくま新書から刊行された『感じない男』は、ネットを中心に圧倒的な反響があり、その後読み継がれて男性学の古典の一つとなりました。そしてちくま新書版が品切れになったのを機に、このたび、ちくま文庫で再刊されることとなりました。

発売は4月10日ですので、ぜひ書店で手にとってみてください。この本のうわさは聞いていたけれども書店にないので見たことがないという方も、4月中は書店の文庫棚にありますので。

文庫版には、「感じない男はその後どうなったのか」という長めの補章が付け加えられています。その中から一部を紹介します。

補章 第2節より

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 そもそも私がこの本を書こうと思ったのは、男性のセクシュアリティについて、客観的な事実を解明したいと考えたからではありません。私がこの本を書こうと思ったのは、セクシュアリティについての自分のつらさや悩みがどこから来ているのかを、どうしても知りたかったからです。
 自分自身のセクシュアリティを掘り下げていくことは、どうしようもない痛みを伴います。なぜなら、それは自分自身の内面に秘めてきた「弱い部分」を、自分自身に対してあからさまにすることでもあるからです。そもそも、弱い部分であるからこそ、それを他人からも自分からも隠しているわけなのですが、しかしその部分に光を当てることをしなければ、自分のセクシュアリティのもっとも本質的な箇所を鷲掴みにすることはできません。
 そしてさらに言えば、もし他人の目に見える形でその作業をやり切ることができれば、それはきっと同じような弱さや痛みを抱えている人たちに、何かの力を与えることができるだろうし、そうやって「弱さ」を接続面としてつながっていくことによって、何か新しい世界が開けてくるのではないかと私には思えたのです。私はこの本で、自分の「弱い部分」を他人の目の前にさらけ出しました。刊行後に私が精神状態を崩した原因のひとつは、まさにここにありました。私のいちばん「弱い部分」を、誰でも、いつでも容易に刃物で刺しに来ることができるという状態に置いたのですから。

補章では、感じない男のその後、生命学との関係、ロリコン社会の進展などについていろいろと書きました。ABK48についてもちらりと触れました。