カント「純粋理性批判」熊野純彦訳

純粋理性批判

純粋理性批判

学部院時代の同級であった熊野純彦による、『純粋理性批判』の新訳。全1巻箱入りで自信に満ちた作りの本である。本のどこを見ても、訳者による解説やあとがきというものがない。まさにカントの著書の翻訳そのものを差し出された感じである。訳者による余分なものがないという点で、逆に訳者の自信のほどがうかがわれる。訳文は、パラパラっと見た限りでは、読みやすくクリアーであるような印象を受ける。この本の翻訳としては、理想社全集版、岩波全集版、平凡社原版、以文社宇都宮版、光文社中山版などが選択肢かと思うが、それにもう1冊増えたことになる。日本人はほんとうにカント好きである。