『ニーチェ』中島義道

ニーチェ ---ニヒリズムを生きる (河出ブックス)

ニーチェ ---ニヒリズムを生きる (河出ブックス)

中島義道の新刊である。今度はニーチェを主題にしている。「ニーチェの言葉」みたいな本が一般受けしていることに中島は腹を立てている。

ニーチェの言葉から「人生の意味」を汲み取ることなどできない。それは、あまりにも異様であり、あまりにも「力」を必要とするからである。(5頁)

じゃあニーチェは無意味かというとそうではない。ニヒリズムの徹底によって次のような結論に至るからである。

私は世界のうち」で死ぬのではない(世界が私の「うち」で死ぬのではないように)。私は、世界に対立するいかなる視点も持たない存在へと反転するのだが、これは、私が「無」になるということであり、しかも世界に対立する「無」(それは「無」という名の「有」である)になることではない。私は世界と「一致」したままで無に至るのだ。そのとき、「無」を「無」とみなす視点さえ消失するのであり、しかもこれこそがまさに真実の姿であるのだから、そこに「ヤー(然り)!」という声が響き渡るのだ。こうしてニヒリズムは完成されるのである。(194頁)

全体としてニーチェを再読する際のよいヒントがいろいろ埋まっているように感じる。