明るいニヒリズム

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中島義道さんの新刊。電気通信大学は退官されたようで、今後は執筆に好きなだけ時間をかけれるのだろう。エッセイ集のような体裁をしているが、これは中島さんの本来の仕事である理論哲学の最新刊である。以前は、過去主義に立っていたが、いつのまにか立場を変えて、現在主義になった。「いま」を中心とする世界のあり方を考え直している。大森荘蔵の問題提起を正面から受けながら、オーソドックスな思索を展開していて、時間の哲学を考える人にとってはよい書物となるはずである。しかし、ここまで現在主義になってしまうと、なんか拍子抜けするような気がしないでもない。でも内容的にはいままでの中島さんの哲学書のなかではいちばんしっくりくる。ただ現在主義に立つと、どうしても「過去(時制)」とは何か、というかなんでそんなものにリアリティがあるのか、ということを説明しないといけなくなるわけで、これはこれでけっこうむずかしい。そのあたり、中島さんの説明でうまくいくのかどうか、また検討しないといけないだろう。しかし時間論としては、私のいま考えていることと、きわめてぴったりくるので、不思議な感じである。ちゃんと批判的に読みたいと思う。