中島義道「時間論」

時間論 (ちくま学芸文庫)

時間論 (ちくま学芸文庫)

訳あって、中島さんの時間論をきちんと読んだ。これはなかなかの名著である。前にも書いたが、日本の哲学書は過去の哲学者の説を吟味することだけで終わる解説書がほとんどだが、この本で中島さんは自分のオリジナルセオリーを提唱している。それは、過去がひとつ前のいまとして切り出されることと相即に、そのひとつ後のいまが成立するというセオリーで、要するに、過去の成立が論理的(超越論的)前提となって現在が成立するということでもある。そういう視座から、ベルクソンの現在主義が批判され、大森荘蔵が批判されていく。

この本のセオリーは検討に値するだろう。(あとがきに私の名前がでているのもご愛敬)

あと、カント哲学のことがよく分かる。やっぱり中島さんはカント学者の素地が大きいのかな。それと大森さんか。時間のことと、カントのことがよく分かる本でしょう。カントの偉大さがほの見えてちょっと怖かった。でも負けないぞ。

2002年の書き下ろしということだが、最近の本で、過去中心主義はやめるというようなことを書いてあったのが不気味だ。このセオリーを否定するのだろうか?

中島さんの本は、一般には哲学エッセイのほうが読まれているが、実はこの本のような哲学書のほうがもっと評価されるべきであると思う。