浜野喬士『エコ・テロリズム』

エコ・テロリズム―過激化する環境運動とアメリカの内なるテロ (新書y)

エコ・テロリズム―過激化する環境運動とアメリカの内なるテロ (新書y)

捕鯨の活動を続けるシーシェパードに代表されるラディカル環境保護運動、すなわち「エコ・テロリズム」の出自と、その背後にある思想、現在の環境運動をめぐる三つどもえの争いまで、かなり詳しく調べて書かれた好著のように思う。環境思想的背景についても、動物解放運動、ディープエコロジー、エコフェミ、ソーシャルエコロジーなどをきちんと押さえている。エコテロリズムを切り口にした米国論なのだろう、狙っているのは。その系譜上に市民的不服従があるという指摘は興味深い。

このようにしてテロリズムという現象を軸にして相対立する両者は、次第に似た相貌を帯びてくる。不倶戴天の敵同士として対立するはずの、「左翼」エコ・テロリズムも、「右翼」反エコ・テロリズムも、ともにリベラリズムの伝統へと回帰し、それを「再活性化」する機能を担うことになる。ここに、アメリカという土壌が歴史的に形成してきた特殊なコンテクストの一端を垣間見ることができるのである(211頁)

このあたりをもっと掘り下げると何か見えてくるはずだ。