英語冠詞の世界

英語冠詞の世界―英語の「もの」の見方と示し方

英語冠詞の世界―英語の「もの」の見方と示し方

語学の勉強というのは、進めば進むほど、わからない点が増えてくる。図書館をうろうろとしていたら、面白そうな本だったので借りて読んでみたら、これはなかなかの名著だった。

日本語ネイティブにとっては謎の世界である、a the 無冠詞の使い分けが、どういう論理でなされているのかについて、言語学の観点からできるかぎりの仮説を出してみた本だ。とくに、theについての記述は目から鱗が落ちる思いがした。詳しくは本をじっくり読んでいただくしかないが、たとえば、

in summer
in the summer

の違いというのは、上は単に、ぽっと「夏に・・・」と言ってるだけだが、下は「四季には春夏秋冬とございますが、春でも秋でも冬でもない、夏には・・」というニュアンスが漂っているという。

同様に、

Japanese are
The Japanese are

上は、単に「日本人は・・・」と言っているのだが、下は、「中国人でもない、韓国人でもない、日本人というものは・・」という感じがあるという。

このあたりから始まって、だんだんと奥深く入っていく様はなかなか興奮する。単なる英語学習書とは一線を画する研究書だ。著者は元関西大学教授とのこと。言語学の世界も、なかなか面白いですね。

最近、本を書くときの日本語の手入れにすごく時間をかけるようになっていて、そのたびに、「なんで日本語ではこう書いた方がわかりやすいのだろう?」という言語学的な疑問を日々感じているのです。日本語をきれいに直す大きな秘訣は、「省略」にあるということを、実証的にわかってきています、校正作業を通じて。その話はまたいつか書こう。(私の論文や書評やブログの日本語はかなりテキトーです)