若松英輔『内村鑑三をよむ』

内村鑑三をよむ (岩波ブックレット)

内村鑑三をよむ (岩波ブックレット)

魂にふれる 大震災と、生きている死者

魂にふれる 大震災と、生きている死者

『魂にふれる』の著者、若松英輔が書いた、内村鑑三についての小パンフレット。次のような文章に惹かれる。

同時代の日本人に先んじて、内村は世界に向かって英語で自らの生涯と思想を語った。彼にとっての日本は、世界に開かれてゆく「日本」だった。それは欧米の文化を積極的に摂取することではなく、むしろ、日本的霊性の意義を世界にむけて問い質すことだった。
 日本的霊性は仏教や儒教の伝統に花開くとは限らない。それは「基督教」においても開花する。彼は真実の「基督教」が日本から興り、それが世界に広がってゆくことを疑わなかったばかりか、その実現こそが自分に課せられた最大の使命だと考えていた。(10頁)

内村のような人物を生んだ、歴史的な背景があるとすればそれは何だろうか。現代に内村のような精神性をもった人物は現われているのだろうか、などと思ってしまう。

この点において内村の血脈を継いだのは、キリスト教者であるより、仏教者鈴木大拙であり、哲学者井筒俊彦である。(10頁)

たしかにそうだよね。いま同時代に誰がいるのだろうか?