『生命倫理のフロンティア』
- 作者: 粟屋剛,金森修
- 出版社/メーカー: 丸善出版
- 発売日: 2013/01/26
- メディア: 単行本
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丸善のシリーズ生命倫理学の第20巻である。私も書いた。タイトルは「まるごと成長しまるごと死んでいく自然の権利:脳死の子どもから見えてくる「生命の哲学」」というもので、脳死の子どもは「まるごと成長しまるごと死んでいく自然の権利」を有しているから、大人はその身体に介入して臓器を取り出すことはできない、と主張する。これは日本のみならず海外を含めてもマイノリティの立場である。その立場に哲学思想的な根拠を与えようとした論文。地味な内容に見えるが、実のところかなり過激な思索が展開されていると思うが、どうだろうか。
他の論文は玉石混淆。坂本百大「「尊厳」概念再考」は、「「尊厳」という言葉が無意味、無内容」(149頁)ということを主張する文章(論文とは思えない)であるが、同様の主張を2003年に行なって話題になったRuth Macklin "Dignity is a Useless Concept" がまったく参照されていないという代物である。