グローバル・エシックス

グローバル・エシックスを考える

グローバル・エシックスを考える

第1章「グローバル・エシックスへとは何か」(寺田俊郎)によれば、グローバル・エシックという言葉をタイトルにした文献は、1993年の「グローバル・エシックのために」がはじめてだとのこと。それを書いたのは、ハンス・キュングとカール=ヨーゼフ・クッシェルである。ハンス・キュングの名前はときおり耳にしていたが、このようなことをもしていたのかとはじめて知った(このテーマの翻訳書も出ている)。キュングの本によると、「世界倫理なくして生存なし」「諸宗教間の平和なくして世界平和なし」「諸宗教の対話なくして諸宗教間の平和なし」が三つの基本精神とのこと。

論文著者の寺田は、キュングの方法は問題があると言う。なぜならそれは結局、宗教にコミットしている人々しかその倫理を受け入れることができないからである。キュングは倫理の究極的基礎に宗教を見ているからだ、と。

ちなみに、生命倫理の分野では、V.R.Potterが「グローバル・バイオエシックス」という本を1988年に出してます(未邦訳)。Potterとは違う意味でグローバル・バイオエシックスが課題になるのは1990年代に入ってから。上記の問題意識ともクロスしてます。