『ソラニン』浅野いにお ― やさしいリアル

草食系男子の恋愛学』の表紙イラストを描いていただいたこともあり、浅野いにお氏の漫画を読んでみた。2006年の『ソラニン』は、いまの若者たちの「やさしいリアル」を描いていて、感慨深かった。

ソラニン 1 (ヤングサンデーコミックス)

ソラニン 1 (ヤングサンデーコミックス)

ソラニン 2 (2) (ヤングサンデーコミックス)

ソラニン 2 (2) (ヤングサンデーコミックス)

大学を卒業して、あるいは留年して、不安定なフリーター生活をしながらバンドを続けている主人公たちの、20代でしか味わうことのできない(だろう)日常の幸せと切なさがにじみ出てくる漫画である。すごいことが自分たちには起きるはずだと思っているにもかかわらず、それと同時に、そんなことはけっして起きないだろうということも分かっているなかで、いまここに生きていることの奇跡を、どう受け取っていけばいいのかというあたりのことが描かれているように思った。たぶんこの作家は、これから宗教的なことを表現していくようになるのではないか。『ひかりのまち』も読んだが、『ソラニン』のほうが断然よかった。今後、どんどん皮が剥けていく作家だろうと思った。男も女も均等によく描けているのはめずらしいのかもしれない。