「震災トラウマと復興ストレス」宮地尚子

震災トラウマと復興ストレス (岩波ブックレット)

震災トラウマと復興ストレス (岩波ブックレット)

宮地尚子さんの新著。精神医学研究者で、医師で、トラウマについて広く考察してきた著者が、すばやくこういう本を出したのには何かわけがあるのだろう。震災が大きなトラウマを当事者や非当事者に与えたが、これからは復興のプロセスにおいて、様々なストレスが人々を見舞うことになるというスタンスで書かれている。著者がかねてより提唱している「環状島」モデルを用いて、トラウマとストレスの具体例を位置づけている。しかしこの「環状島」というメタファーはもっと注目を集めてもいいのではないだろうか。論理よりも、イメージ喚起力が大きく、それによって、見えてくる(ような気がする)ものはたくさんあるように思う。この本自体、ある意味「外側」からの論説であるが、いままさに声を失っている人や現場で援助している人にとっても手助けになる知見がいろいろあるのではないだろうか。