荒木飛呂彦の奇妙なホラー映画論

荒木飛呂彦の奇妙なホラー映画論 (集英社新書)

荒木飛呂彦の奇妙なホラー映画論 (集英社新書)

漫画家、荒木飛呂彦が書いたホラー映画論、ということで、なんとなく手に取ってみたが、これは映画論の傑作である。蘊蓄と理論を振り回すタイプの映画論も面白いが、この本はそれとはまったく違って、自身の好きなホラー映画に対する「愛情」が、文章からリアルに伝わってきて、それを読んでいる私のほうもその愛情に癒されてしまうという作品である。このおっさん、ほんとに、ホラー、ゾンビ、スプラッターが好きなんだなあということを感じることができる良い読書となった。

映画ゾンビは名作だが、それに対する目の付け所もなかなかユニークで良い。「悪魔のいけにえ」の細部への目線とかも。実は私も映画論をいつかは書こうと思っているのだが、この本はそのときの参考になった。この本には映画のシーンの写真とかがない。そのかわりに、文体が生きていて、いっきに読者を読み進ませる。これは書き手としてとても参考になった。愛情でもって映画論を書くというのは、よい試みだなあ。私もその作戦でいこうかな。

蛇足:まあ、いまいちばんのホラーは、1号機から3号機のメルトスルー(格納容器底突破燃料)が、いったいどこに存在して燃えているのか、ということでしょうけどね。