「災害がほんとうに襲った時」中井久夫

災害がほんとうに襲った時――阪神淡路大震災50日間の記録

災害がほんとうに襲った時――阪神淡路大震災50日間の記録

阪神淡路大震災を経験した精神科医中井久夫が当時書いた文章の再刊と今回の災害についての新エッセイをまとめたもの。タイムリーな出版である。今回の震災については、下記のようなことも言っている。

私はひょっとしたら「フクシマ・フィフティズ」なるものは架空の存在であって、日本国内には不十分であろう現場の人にエールを送り、そしていざとなればチェルノブイリのような決死隊の編成を行なうようにと示唆するために作られたものではないかと、気をまわした。それを感受した一隊員夫人の「日本の救世主になってください」という言葉はその表れだろう。(23ページ)

しかし次のような記述はこれでいいのか。

大阪府の附属池田小学校の学童殺傷事件の時、大阪府警は、女性警官を被害者の家庭に配属して日常生活を援助させた。これが非常に喜ばれたという。(7ページ)

事実を書いているだけなので著者の責ではないが、著者のコメントが欲しかった。

「災害がほんとうに襲った時」の当時の文章はウェブで無料開放されている。
http://homepage2.nifty.com/jyuseiran/shin/

ウェブと本の同時刊行というのは意味ある試みだと思う。