「救児の人々」赤ちゃんをどこまで助ければいいかという問い

救児の人々 ~ 医療にどこまで求めますか (ロハスメディカル叢書 1)

救児の人々 ~ 医療にどこまで求めますか (ロハスメディカル叢書 1)

熊田梨恵さんによる、高度新生児医療の狭間に落ち込んだ人々へのインタビュー本。ここに捉えられた言葉は貴重なのかもしれない。下記の言葉は31歳シングルマザーの母親のもの。早産で生まれた子は生まれつき脳に障害があり、母親と意思疎通することすらできない。母親はキャリアを絶たれ24時間介護をしている。

「もしこの子がいなければ」と考えないことがない、と言ったら嘘になると思いますよ。子供が助からない方がよかったのかもしれないと、言ってはいけないとは分かってますけど、やっぱり思うことはあるんです。でも、そんなことを言えば、自分は地獄に堕ちると思うし、何よりも生まれてきてくれたこの子に申し訳がなさ過ぎますよ。「子供は神様からの授かりもの」という言葉を聞くたびに、そう思えない自分が嫌いになります。私が思うのは、「産んでしまって、ごめんなさい」なんです。こういう気持ちをどうすればいいのか、本当に分からなくて、助けてほしいですよ。(p.36-37)

あ、これも自分勝手なのかもしれないですね。救われたいんです。救いようがないから。あの子がこれからどうなるかも分からないし、私も仕事辞めてしまった。親だってこれから歳をとります。先が全然見えないです。 ・・・ インターネットとかにある障害のお子さんのお母さんの育児日記とか、吐き気がします。ごめんなさい、変なこと言って。自分にという意味でね。別にいいんです、とても素晴らしいし素敵です。受け容れて、前向きになって笑顔の写真とか・・・。でも私には絶対できないって。もう前向きになんてなってやるもんか、みたいな。(p.46-47)

あの子の幸せは、この子が自分でどう感じているかだけど、分からないじゃないですか。話せないし、表情もよく分からないし。せめて話してくれたらなって。聞きたい。翔太に「生まれてきてよかった? 今どう思ってるの? 何感じてるの?」って。それから、もし答えてくれるなら、「私のこと好き?」って聞いてみたいなあ(苦笑)。お母さんのこと好き? おばあちゃんのこと好き?って。・・・(p.374)

インタビュー詳細は同書で。熊田さんはこの母親に、「まだ翔太君が生まれなかった時に戻りたいと、思われることはありますか」とも問うている。