道元―自己・時間・世界はどのように成立するのか

頼住さんの道元入門書を読んだ。これは非常に良くできた本であった。「解脱」によって<空>を体得し、そこから「現成」によってこの世界に回帰するという道元の見取り図が、色即是空・空即是色の基本に忠実であることなど、連想は尽きなかった。道元が、言語とその意味を脱臼させながら進んでいくその手法それ自体が、みずからの言い取りをそのつど新たに行為しなければならないという禅の要請から来ていることも、明確になった。中国原典との対比をうまく使いながらなされる現代語訳も、かなりのレベルなのではないだろうか。有時が時熟であることも示唆されている。

道元のものを一切読んだことのない読者は、ちょっと読むのに時間がかかるだろうが、時間をかけてみてもいいのでは。道元を読んだことのある読者は、頭の中がかなりすっきりするはず。

頼住さんは、大学院時代の院生仲間でした。正法眼蔵をゼミで超低速で読んだ経験は私にとってももっともインパクトの強い授業だった気がする。