ハンス・ヨーナス「アウシュヴィッツ以後の神」
- 作者: ハンスヨーナス,Hans Jonas,品川哲彦
- 出版社/メーカー: 法政大学出版局
- 発売日: 2009/09/01
- メディア: 単行本
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ヨーナスの3本の論文をまとめた書物の翻訳である。アウシュヴィッツという経験に整合的な神概念の探求がここでのテーマとなっている。ユダヤ人の哲学者で、生命の哲学の探究者が、いかなる提言をしているのか一読の価値はあるだろう。訳者である品川哲彦さんによる「ハンス・ヨーナスの生涯」が付されていて、資料的にも貴重である。いずれにせよ、ハイデガーの異端の「弟子」であり、アーレントの盟友であったヨーナスは引き続き注目すべきだ。
Kristin Zeilerの脳死多元論肯定論文
Bioethics誌最新号に、Kristin Zeilerという人が、米国ニュージャージー州法と、日本の旧・臓器移植法を取り上げて、この二つに見られる「死の多元主義(脳死とともに心臓死も認める)」を肯定的に評価する論文を発表している。こういう内容が掲載されたことは、軽い驚きがある。内容は、われわれが日本で議論してきたことを超えてはいないが、ロールズの多元主義についての議論を参照した点は面白いかと思う。日本の旧・移植法改正については、私の英語論文から多くの情報を得ている模様である。1990年代から欧米で始まった、脳死概念再考の流れの中に位置付く論文だと言える。しかし、今年7月に日本の臓器移植法が改正されて、単純には多元主義とは言えなくなったことは皮肉だ。この著者はその情報を得ているだろうか。
Kristin Zeiler, "Deadly Pluralism?: Why Death-Concept, Death-definition, Death-criterion and Death-test pluralism should be allowed, even though it Creates Some Problems" Bioethics Vol.23, No.8, (2009):450-459.