母性のゆくえ

母性のゆくえ―「よき母」はどう語られるか

母性のゆくえ―「よき母」はどう語られるか

バダンテールの新著。母性と育児についてエッセイ風に書かれた本で、面白い論点がいろいろ見られる。訳者あとがきに簡潔にまとめられているように、フランスの出生率の高さは、産後2ヶ月以上母乳育児する女性が少なく、すぐに仕事に復帰するパートタイム・マザーが多いからであり、また社会の側も伝統的に母親が育児音痴であったとしてもそれを問題視しない意識が強いから、ということのようだ。日本では逆に母親に完璧な母親を求めがちな社会意識が男性にも女性にもあって、それを母親・女性が内面化しているということが問題なのだろう。途中、添い寝についての議論があって、添い寝は子どもにとって良いという考え方を紹介しながらも、夫婦のあいだに子どもが割り込んできてセックスをじゃまされるのではないかという感じの危惧が真剣に語られているのはフランスっぽいのだろうか。母親になっても性的魅力は失いたくないという願望については、いまの日本の女性たちはどうなのだろうか、など思った。