中島義道「人生に生きる価値はない」

人生に生きる価値はない

人生に生きる価値はない

中島さんの最新刊。しかし中島さんもよく本を出しますね。中島節が炸裂していて、面白いです。読み始めると止まらないですね。冒頭の、日本に充満する「みんな一緒主義」が最大の日本社会の問題であって、それを解体しない限り、いじめもなくならないし、被害者は増えるばかりだと言う。まあ、そのとおりだろう。同じことは私の「33米」にも書きましたが。

騒音への苦情申し立てと戦いは、あいかわらず続けているようだ(著者の言葉を信じれば)。中島さんは高知に行ったときにも騒音に苦情を申し立てた。

すぐに担当の者に苦情を訴えたが、改善はしないであろう、と携帯のアイポッドのイヤホンを両耳に差し込み、音量を最大にしてそこから逃れた。(16ページ)

この箇所、個人的にウケました。この人が敵視しているものは大音量の音ではないのだな。

池田晶子を追悼する文章も、ひねくれてて面白い。だって、池田がいかに女性としてキレイだったかということしか言ってないし。それと、池田が本質的に哲学的でないと言っている。この点にかんしては、私も同じ意見。(だがもちろん誰だって哲学者と名乗る権利はあり、名乗ればその人はすでに哲学者である。他人がそれをどう評価するかはまた別問題)

最後の時間論のところは、中島さんが過去中心主義を捨てたということを告白していて、新展開かもしれない。エッセイだけではなくて、早く新しい時間論の大著を書いてほしいものです。そうしたら、それを受けて私も時間論を書きますがゆえに。