『看護学生のための医療倫理』

看護学生のための医療倫理

看護学生のための医療倫理

看護学生のための医療倫理のテキストである。看護師国家試験も視野に入れられている。個々のテーマは簡潔に情報がまとめられており、ハンドブックとしても使い勝手は良さそうである。ただ内容にはばらつきがある。伊野連執筆の移植法関連の項目では、次のように書かれる。

小児脳死認定のさらなる厳格化とともに、小児本人およびその保護者にも臓器移植についてより適切に理解してもらうことが必要である。・・・門戸は狭まっている。日本における臓器の「自給自足」は火急の問題なのである。(155ページ)

この場合の「適切」な理解とは何なのか。なぜ「自給自足」を急がなければならないのか。そもそも脳死小児をターゲットとした「自給自足」という表現は、これでいいのか。などの疑問が次々と湧いてくる。これらへの批判的な考察を含めた授業がこのテキストを用いてなされればいいのだが、医療系大学でそれが可能な場面はきわめて限られていると私は思わざるを得ない。