他者・死者たちの近代

末木文美士の新刊。なかでも死者とともに生きるリアリティについての議論は刺激的である。「死者と共に闘う―上原専禄」と題された章は読み応えあり。死者はどこかへ消えていって、この世には追憶のみが残るのではない。むしろ残された私と死者とがこの世界で共闘する、ということすらあり得る。よく死者が死後に審判にさらされると言われるが、実はそうではなくて、死んだ人たち、殺された人たちはことごとく審判の席に座って生者を裁く主体となっているのではないか。というような次元のことが、1973年の上原の仏教的死者論において展開されているとのことだ。死者とともに生きるということのリアリティから何を学べるのか、ということを考えさせられた。言及された本も読んでみたい。