嵐、表参道駅、ジェンダー

とある用事で東京の地下鉄表参道駅に降り立つと、なにやら警備員がたくさんいて、女性たちが柱や壁のポスターに群がってさかんに写真を撮っている。なんだろうと思って見てみると、嵐という人たちの上半身裸緊縛写真ポスターが表参道駅の柱や壁に貼られていて、みんなそれを撮っていたのであった。

写真を撮る女性たちで構内は大混雑で、警備員が「止まらないでください〜」と絶叫状態。

ポスターは見てお分かりのように、若い美形男性の上半身裸に、口をガムテープでふさぎ、紐で柱を緊縛するというもの。陵辱されるのは若い男性で、視姦するのは女性という構図。この写真に性的な意味がない、とは言えないであろうし、女性の置かれた性的地位を暴露するためにあえて被害者を男性に置き換えた告発写真とも取れないであろう。

若い美形男性に突き刺さる視線の渦の現存を、はからずも明るみに出したプロジェクトに結果的にはなっているとは言える。「草食系男子」現象のひとつの帰結とも言えるかもしれない。しかしこのような視線の海を泳がなくてはならなくなった現代の若い男性たちは、ようやくかつての女性たちの社会的地位に追いつきはじめた、ということなのだろうか。しかし男性の場合には、この先にあるはずの女性によるレイプという終着点がほぼ存在しないがゆえに、女性とはまったく意味合いが異なり、単なるファンタジー遊技で終わるということなのか。

まあ「(ただしイケメンに限る)」や、ネタで撮っていただけ(という言い訳が他人および自分に対して使える)などという側面もあるだろう。

などと新年早々考えながら駅を後にして目的地に向かったのであった。

追記:あとで調べてみたら、「嵐 表参道ジャック」というプロモーションだったみたいです。
http://www.asahi.com/showbiz/nikkan/NIK200912280050.html